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    4月16日 第2230例会 <藤本副会長> |

    4月16日 第2230例会 <藤本副会長>

    昨年から、朝日新聞で、夏目漱石の小説が、100何年かぶりに連載されていますが、その連載に当たって、天声人語で次のようなお話が載っていました。

    作家には、その作品のタイトルに凝る作家と、そうでもない作家がいます。夏目漱石は後者の代表格で、おおむね素っ気なかったとのことです。 名高いデビュー作も、「猫伝」とするか、それとも、書き出しの一文をそのまま使うか、と考えていたそうですが、俳人の高浜虚子が推して後者、つまり「吾輩は猫である」になったとのことです。虚子がいなければ、私たちは今ごろ「猫伝」という名作を読んでいたかもしれません。

    「三四郎」にも、次のような逸話があります。  

    漱石は「青年」「東西」「三四郎」「平々地」などの題をあげて、連載する朝日新聞の担当者に、選んでもらいたいと手紙を出したところ、「三四郎」が一番平凡でいい、という漱石の意思もくんで「三四郎」に決まったとのことです。巧まずして出色の題になったようです。

    ところで、今世界で一番人気のある日本人作家といえる村上春樹の5作目の長編「ノルウェイの森」は当初は「雨の中の庭」というタイトルで書き始められたそうです。このタイトルはドビュッシーのピアノ曲集「版画」の中の一曲「雨の庭」に由来します。しかし、題名に迷った村上春樹が、妻に作品を読ませて意見を求めると、「ノルウェイの森でいいんじゃない?」という返答があったといいます。ビートルズの曲の題をそのまま本の題にするということで、本人は当初気が進まなかったらしいですが、周りの「『ノルウェイの森』しかない」という意見に押されて今のタイトルとなったとのこと。これも巧まずして出色の題になったといえるのではないでしょうか。

    もうひとつ、村上春樹の著作で、「中国行きのスロウ・ボート」という短編があります。

    村上春樹の作品の多くは内容を決めずに題名だけ考えて書き始められるといわれています。「中国行きのスロウ・ボート」はジャズサックス奏者ソニー・ロリンズの演奏で有名な「オン・ナ・スロウ・ボート・トゥ・チャイナ」というスタンダードナンバーから取ったタイトルです。小説のタイトルにこの曲名を使った理由として、「僕はこの演奏と曲が大好きだからである。それ以外にはあまり意味はない。『中国行きのスロウ・ボート』という言葉からどんな小説が書けるのか、自分でもすごく興味があった」と村上春樹は述べています。

     

     

     

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